ご存知の方もいらっしゃると思いますが、不定期でお手伝いを

してくれているスタッフをご紹介させて頂きます。

その名は、いっちゃんこと一石君です。

実は彼は障害を持っています。

 

一見すると健常者に見えるかも知れませんが、特に計算は苦手です。

ですからガソリンを注いだりする際に、5Lを超えるとちょっと分からなくなる

時があります。そんな時は、みなさんからのサポートをお願いします。

 

7年くらい前は、土日月の3日間をレギュラーで働いていました。

施設長の方と色々お話しをさせて頂き、彼の主治医に質問(留意点)を聞き、

無理がないところで、掃除等の簡単な作業をしてもらうことにしました。

なぜ彼がここで働くようになったか?それは彼はカートが大好きだからです。

カートに限らずモータースポーツが好きで好きでたまらないのです。

 

彼がここに来るようになったのは、20年以上前だと聞いています。当時は自分のカートも

持っていたようですが、整備ができず今はタンスの肥やしになったと言っていました。

コースとしては以前から、軽作業をしてくれる人がいたら助かるという話を社長にしていた

んですが、社長の「必要ない!」の一言で片付けられていました。

そんなあるレース開催日に、社長の目に止まったのです。

その日、人手が足りなく社長が彼にちょっとお手伝いを頼んだそうです。

そうしたら、あれだけかたくなに「必要ない!」と言っていた社長が、「あの子はちょっとトロいけど、

一生懸命に働くいい子だな。あいう子に手伝ってもらえばいいんだよ!」と今までの拒否は

何だったの?ということで、彼は前出のスケジュールで働いてもらうことになったのです。

 

障害者支援とか、補助金とか、そんな動機で雇ってないので、単純に軽作業をして

もらい、時間が空いたらレンタルカートに乗ってもいいという感じで彼は働きはじめたのです。

給料は施設長に訊いて決定したのですが、障害の程度によってできる作業が限られる為、

彼らの給与査定は非常に曖昧なことが分かりました。とは言っても、彼は結構色んなことができ

そうだったので一般より少し安い時給で設定し、日払いで働いてもらうことになりました。

ただこれは直ぐに変更されます。なぜなら、彼はもらったお金を直ぐに使い果たしてしまうからです。

ほどなく日給月給になりました。月にまとめると3~4万円になるのでいいお小遣いになった

と思いきや、そのお金も直ぐに使い果たすことが分かったので、給料はオヤジさんに渡すこと

になりました。(これもその後、変わる)

 

彼の性格を一言で言うと、明るく楽しく優しい子です。

子という年齢ではありませんが…、

ボクは子供の頃から障害がある子が身近にいたので、彼らを特別視することはあり

ません。障害があると、時に不便だとは思いますが、不自由だとは思いませんし、逆に

健常者より精神的にも肉体的にも強い人は多いです。

身体障害と知的障、またその程度により、抱える問題は異なるでしょうが、どちらにしても

彼らに対して腫れ物に触るような対応をする必要はないと思いますし、必要以上に気を

使う必要もないと思います。ただ困っている部分を、少しだけサポートしてあげればいいのだと

思うのです。

 

そんないっちゃんが本日、大変身してきたのでご紹介します。

実は彼は、数年前から頭のテッペンが薄くなっていました。

先日もそんな話を彼としていたところです。

そんな、いっちゃんが本日、登場し開口一番に「ちょっと、やっちゃいました」と彼。

突然そんな事を言われても何の事だか分かりません。

見慣れない帽子を被っていたので、「帽子なんて珍しいじゃない」と言うと、

「恥ずかしいんですけど…、」と言って帽子を取るとなんと丸坊主!

確かに、後生大事に守り通すより、坊主にするのは潔いというものです。

ちょっと、いっちゃんを見直した訳です。

 

それで、いっちゃんに「いいじゃん、カッコイイよ!」と声を掛けたら、彼が少し

難しそうな顔をして「いや、違うんです」と言うのです。「何が違うの?」と訊くと

「お父さんが、バリカンのアタッチメントを間違えたんです」と彼。

さずが、いっちゃんここにあり!です。底抜けにやってくれます。

ボクは気付かなかったのですが、坊主のいっちゃんを見たマネージャーが

一言、彼に「いっちゃん、シュシュはいらないでしょ」

彼の右腕にはなぜかシュシュが…、

髪が無くてもシュシュはある。意味が分かりませんがそこが彼が彼たる所以です。

いっちゃんのファッションセンスは、KENZOとKANSAIを足して有り余るものがあり、

凡人の理解を超えたセンスは、時として志茂景樹をも凌駕します。

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ただし彼は現在アルバイトという立場ではありません。

好きな時に来て、何かお手伝いをし、レンタルカートに乗って帰るという、

ふうてんの寅さんのようなスタンスです。とても羨ましいです。

 

お客さんの中には彼の障害を理解し、細かなサポートや温かい

お声を掛けて頂いていることに対し心よりお礼を申し上げます。

 

これからしばらくは、いっちゃん列伝をお送りします。

かれはボクの中で既に伝説です。